神戸大学マンドリンクラブ第53回定期演奏会
会場について
会場は神戸芸術センター内の芸術劇場。1100名収容のまだ新しいホールで、新神戸のすぐ近く、三宮からも徒歩範囲にある。ただ、
- 「収容可能な可動式客席」のためか
- ホール客席出入り口が少ない
- 客席の下?からか隙間風が入ってきて少し寒い
- 天井の鉄骨組みあたりから「カチ カチ」と時々音が……。気になってしまった。
- 女子トイレの数が多くなく、休憩時間はかなり並ぶ
- 音の響きは若干、おとなしい感じ。もっと響いてくれたほうがマンドリン演奏には向いているかも。
といった印象を受けた。
プログラム
- 商神
1部
- マンドリンオーケストラの為の「懶」 / 遠藤秀安
- Waltz For "Mie" / 久保田孝
- メリアの平原に立ちて / G.Manente
2部
- 無言歌(委嘱作品・初演)/ 吉水秀徳
- 3Dimensions / 吉水秀徳
演奏についての感想 良かった点
美しく繊細で、魅力的な演奏。
音は美しく繊細。特にギターパートが素晴らしくアンサンブルの響きに一体感がある。音の入りは明瞭で早弾きはよくそろい一音ずつがゆるがせにされず、クリアに耳に届いた。打点、音楽の解釈、音色など演奏すべてがよくコントロールされていることに大変感心した。
いっぽうで、学生・若者の演奏らしい生き生きとした感性も控えめながら常に感じられた。誠実で清潔な音作りと音楽を前に進めていくひたむきな推進力。心打たれる、非常に魅力ある演奏だったと思う。聴きなれない現代邦人作品であってもマンドリン音楽の特性が生かされるよう工夫されていることが理解でき、惹きつけられた。
特に2部、3部が素晴らしかった。
2部の吉水秀徳氏の作品…初演の「無言歌」については無言歌らしい音楽性・内省的でメランコリックな抒情が感じられ、「3Dimensions」ではさまざまな表情をマンドリンオーケストラで良く表現していたと思う。ギターの音の美しさには感動させられた。
3部2曲目の小林由直「風の軌跡」ではまさに「風」のイメージ、うねり、吹き渡る感が表出され、演奏者の熱い気持ちが演奏をどんどん盛り上げていた。
残念だった点
カタルシスについて。
「美しく繊細」は今回の最大の特徴であり長所ではあるが、しかし、わたし個人的な好みではもっと奔放なところもあってよかったように思う。パッションの表出、それらから生まれる対比・ダイナミクス・カタルシスが欲しい。ただ、ホールの響きのせいもあったかもしれない。全体にややおとなしい演奏に感じられた。
音の変化。音色、深さ、圧力。
箇所箇所で、音色や音の深さ、音の圧力などの変化の検討が欲しい。特に低音系。ギターでいえば、音色の美しさやまろやかさだけではなく、
- 重い音
- 圧力のある音─たとえば3拍子の曲で1拍目と3拍目の違いを考える。たとえば擦弦楽器(ヴァイオリンなど)で、ボウが弦を弾き始めるとき、どういう音を出すか。マンドリンがすべてヴァイオリンを真似する必要はないが、ボウイングが音楽にどういう効果をもたらすかを研究する必要があると考える─、深い音。
- 逆に浅い音、軽い音が求められる場合もある。
- クリアな音
- 鋭い音(バルトーク・ピチカートのことではない、鋭い音)
といったような使い分けが出来る。何箇所かで音色の変化は感じられたが、特に音の深さ、圧力についてをもっと検討してほしい。マンドリン・ギターといった撥弦楽器には難しい課題だ。
パーカッション。
賛助のパーカッションが入る曲において、パーカッション(特に大太鼓)の音がマンドリンオーケストラに比べて大きすぎ、オーケストラの音を消してしまっていたのが非常に残念だった。マンドリンオーケストラの演奏そのものは良かったのに客席にあまり聞こえてこない。
パーカッションの打点とマンドリンオーケストラのそれとはよくそろっていたので─一般的な弦楽オーケストラに比べてマンドリンオーケストラは音の立ち上がりが早いため、パーカッションはその点を考慮していつもより早めに打つよう調整してもらわねばならない。今回はその問題はよく考慮され、解決されていたように思う─、もういっぽうの課題である「パーカッションの音量」をマンドリンに合わせていつもより小さめにしてもらう必要があったのではないかと思う。
清々しい
素晴らしい、爽やかな演奏で清々しかった。OB云々を抜きにして、また聴きに行きたいと思った。
*1:実はOB(ギターパート)なのだが、なかなか帰省しないものだから、聴いたのは16年ぶり(?)くらいだったりする
*2:ギターマンドリン合奏団 meets 小林先生の部屋も参照のこと。