雪街音楽メモ

聴いた音楽、気になった音楽、音楽の話題など、音楽のある日常を書きました。

CD『ALTUS アルタス 奇跡の声 カストラートからカウンターテナーまで』

ALTUS 奇跡の声

ALTUS 奇跡の声

日常から離れて ─精緻な技巧、豊かな声量

今、話題のオムニバスCD。
男性が女性の声域で歌うカウンターテナーボーイソプラノを維持するために去勢された男性歌手「カストラート*1。主に中世やバロック、またロマン派の歌を彼らの歌声で聴くことができる。
彼らの声は、女声とはまた違うのがなんとも不思議で、魅力的だ。女性独特の「色気」、まろやかさは無いように思う。しかし完全にコントロールされて精緻な技巧がこらされ、声量は豊か、柔らかでおおむね女声より太く、なんというかこの世─世間─に存在しないもの(存在しているのだが!)、天上に上っていく音楽のようにも思える。このCDで浮世を忘れたひと時を過ごせるように思った。
このCDには記録に残る歴史上「最後のカストラート」といわれるアレッサンドロ・モレスキ(1858年〜1922年。wikipedia:アレッサンドロ・モレスキ)の1902年の録音も収録されている。音質は悪く、また彼自身の全盛期は過ぎていると思われる。決して良い歌唱ではないが、感慨深いものがある。

カストラート

カストラート [DVD] カストラートについては、最も優れたカストラートとして語られる”ファリネッリ”ことカルロ・ブルスキ(1705年〜1782年。wikipedia:カルロ・ブルスキ)の生涯を描いた映画『カストラート』が興味を満たしてくれ、面白かった。映画の中で音楽をたっぷり聴けるのも良い。

収録曲

  1. シューベルトアヴェ・マリア(デイヴィッド・ダニエルズ)
  2. ヘンデル:歌劇「セルセ」より 私の愛するプラタナスの木に〜オンブラ・マイ・フ(ジェラール・レーヌ)
  3. マルティーニ:愛の喜び(デイヴィッド・ダニエルズ)
  4. シューベルト:水の上で歌う(デイヴィッド・ダニエルズ)
  5. ボノンチーニ:愛らしい瞳〜カンタータ「今や愛の季節が」より(ジェラール・レーヌ)
  6. ポルトガル古謡:世を統べる聖母よ(ジェラール・レーヌ)
  7. ペルゴレージ:「スターバト・マーテル」より スターバト・マーテル(悲しみの聖母)(ジェラール・レーヌ)
  8. レグレンツィ:アヴェ・レジーナ・チェロールム(フィリップ・ジャルスキー
  9. J.S.バッハ:マニフィカトより そのあわれみは(フィリップ・ジャルスキー
  10. J.S.バッハ:ミサ曲 ロ短調より アニュス・デイ(チャールズ・ブレット)
  11. ヘンデル:「メサイア」より 彼は侮られて(ジェイムズ・ボウマン)
  12. ヴィヴァルディ:歌劇「ジュスティーノ」より この喜びをもって会おう(フィリップ・ジャルスキー
  13. ヘンデル:歌劇「エジプトのジュリオ・チェーザレ」より 私は涙するために生まれてきた(デイヴィッド・ダニエルズ)
  14. モンテヴェルティ:歌劇「ポッペアの戴冠」より ただあなたを見つめ(デレク・リー・レイギン)*2
  15. ロッシーニ:猫の二重唱(ジェラール・レーヌ)
  16. グリーンスリーヴス(アルフレッド・デラー)
  17. ロッシーニ:「小荘厳ミサ曲」より 十字に架けられ(ボーナス・トラック)(アレッサンドロ・モレスキ)

*1:19世紀末に禁止され、現在は存在しない。彼らは成長すると体格は大人のそれとなり、肺活量は大きくなる。少年の歌声と、大人の圧倒的な声量が両立するのだった

*2:上記の映画『カストラート』では、ファリネッリの声の再現としてこのデレク・リー・レイギンが歌声を提供した。低音域はレイギンの声、高音域はレイギンとソプラノのエヴァ・ゴドレフスカの声を合成しているとのことだ。