雪街音楽メモ

聴いた音楽、気になった音楽、音楽の話題など、音楽のある日常を書きました。

CDジャーナルムック『中島みゆき読本』(音楽出版社)

CDジャーナルムック 中島みゆき読本

CDジャーナルムック 中島みゆき読本

2009年6月17日発売。

80年代、90年代の懐かしい評伝、00年代以降の最新インタビュー、ディスクガイド、田村仁による中島みゆきの写真、代表曲5曲の楽譜

……列挙して書くと盛りだくさんのようだが、内容は実はかなりシンプルだ。それぞれの年代を代表するような「主要」なものだけが選ばれて採録されている。
ひとつずつ全文、もしくは長い文章として抜き出されており、それぞれ読み応えがある。音楽評論家・こすぎじゅんいち(1992年没)の『魔女伝説』(1982年)などは若いファンは知らないのでは? 中島みゆきが「中島みゆき」になる前の物語を、取材と推論、想像で書いている非常に詩的な内容だ。

そして、(こすぎ氏の文章の占めるパーセンテージが高いことからも推測されるのだが)これまで出版された中島みゆき関係のムック本のなかでは最もファン向けに作られているように思えた。ファンが平穏に受け入れることのできる評伝やインタビューなどに絞らている—イコール、中島みゆきの神秘性や『魔女』的な側面を評価する内容、優れたシンガー・ソングライターとしての楽曲評価、彼女のファンである人々による文章やインタビューなど—。だからファンなら満足するだろうし、しかし、マイナス評価やゴシップなども知りたい向きにはやや不向きかもしえない。

素晴らしいディスクガイド、いっぽうでちょっと残念だった楽譜

杉山達 氏によるアルバムごとのディスクガイドはサウンド面の解説が豊富で、これまでにない内容だったように思う。特にバックミュージシャンの演奏の特徴の指摘や、それによるアルバムとしてのサウンドの変化など。非常に参考になった。

それに対し、収録のギター弾き語り用の楽譜については、楽しみにしていたのに残念なできだった。実際に弾いてみたらコードと実際の五線譜の音が気づいただけで数カ所違っていたりする。たとえば、コード指定はEmなのに五線譜にはG7の音で書いてあったり、D7が五線譜では違うコードの組み合わせのアルペジオで書いてあったり。それらは五線譜のほうで弾くと明らかに歌にあわないので、コード優先で五線譜の音を修正して弾かねばならない。しかし初心者なら五線譜の記載間違いとは気づかず、歌に対して濁った伴奏に悩むことだろう。単純に記譜のミスだと思うが、きちんと校正してほしかったと思う。

中島みゆき読本』内容

1975年にデビューし、以後、シンガー・ソングライターとして多量にして多彩な作品を世に問い続けている中島みゆき。しばしば「魔女」の名で呼ばれるそのユニークな個性と表現世界を、エッセイ、対談、インタビューで探る。全スタジオ録音作品のレビューも掲載!

★代表曲5曲の楽譜を収録
時代 / ホームにて / わかれうた / ファイト! / 地上の星

【主な内容】
http://www.cdjournal.com/Company/products/mook.php?mno=20090617